脳卒中後遺症「痙縮」のリハビリとボツリヌス療法
脳卒中後の手足のつっぱり「痙縮」をご存知ですか?
痙縮とは筋肉が緊張しすぎて、手足を動かしにくかったり、勝手に動いてしまう状態のことです。痙縮では、手指が握ったままの状態になる、肘が曲がる、足先が足の裏側のほうに曲がってしまうなどの症状がみられます。リハの障害となることもありますし、痙縮による姿勢異常が長く続くと筋肉が固まって運動が制限され、日常生活に支障が生じてしまいます。脳卒中後の患者さんに多いですが、頭部外傷、脊髄損傷、脳性麻痺、多発性硬化症など他の脳や脊髄の病気によっても起こり得ます。
痙縮の治療法
痙縮の治療には、内服薬(飲み薬)、ボツリヌス療法、バクロフェン髄注療法、装具療法、外科的療法などがあり、患者さんの病態や治療目的を考慮して選択し、さらにリハと組み合わせて行います。複数の治療法を用いることもあり、担当医に総合的に判断してもらうことが重要です。豊見城中央病院ではリハ科医が治療を担当しています。
その他、装具療法、外科的療法などの治療方があります。
ボツリヌス療法とは
ボツリヌス療法とは、ボツリヌス菌が作り出す天然のたんぱく質(ボツリヌストキシン)を有効成分とする薬を筋肉内に注射する治療法です。ボツリヌストキシンには筋肉を緊張させている神経の働きを抑える作用があり、そのためボツリヌストキシンを注射すると筋肉の緊張を和らげることができます。日本では手足の痙縮に対し、2010年から治療できるようになり、患者さんによっては非常に効果の高い治療法となっています。
ボツリヌス療法の効果とは
注射した筋肉の緊張を落とすことができます。手足の筋肉がやわらかくなり、動かしやすくなることで、日常生活動作(ADL)やリハが行いやすくなります。全身投与ではないため副作用が少ないという特徴があります。
ボツリヌス療法の特徴
●注射した筋肉のみ緊張を落とすことができる。
●全身投与ではないため副作用が少ない。
●3ヵ月程度で効果が弱まってくるため定期的な注射が必要。
※一方で最適な投与量や投与部位を模索できるなど良い点でもあります。
当院ではボツリヌス療法チームを立ち上げました!
ボツリヌス療法は注射するだけでは筋肉の緊張が緩むだけなので、緊張を取ったあとどう治療するのかが大切になります。当院ではボツリヌス療法チームを2022年に立ち上げ、リハビリテーション科医、理学療法士、作業療法士で協同して患者さんにベストな治療を提供する試みを行っています。
NEWS!リハビリテーション科指導医資格を取得しました!
リハ科専門医はリハについて専門的に勉強し、トレーニングを受けている医師でリハの質を担保するために重要な役割を担っています。しかし、リハ科専門医は全国で3千人ほどしかおらず、回復期リハ病棟のある病院でもリハ科専門医のいない病院があるなど人数が足りていない現状があります。今回リハ科指導医資格を取得したことでリハ科専門医になりたい医師に当院で研修ができるようになりました。たくさんの専門医を育成し、地域のリハの質の向上で皆さんに還元できるようにしていきたいと思います。
リハビリテーション科 福原 香 医師
リハ科医の仕事
リハ科医が担当する領域は非常に広いですが、最も得意としているのは麻痺などの後遺症や障害が残る病気です。まずその後遺症の回復が最大限に回復するように努めます。また後遺症が残った場合でも残った能力でできることを増やすこと、生活の質を上げることを常に考えています。また、後遺症によって痛みや変形など2次障害が生じないような治療も行います。
リハを始めるには理学療法士、作業療法士、言語聴覚士に適切な指示(リハ処方)が必要です。しかし、一度指示を出しただけでは十分ではありません。何度も評価と指示を繰り返します。また、リハ科医は他の専門職とチームを組んで患者さんのリハが効率よくスムーズに進むように患者さんの状態を整えていきます。チームのメンバーは理学療法士、作業療法士、言語聴覚士に加え、看護師、栄養士、社会福祉士などがおり、それぞれが専門性を持っていますが、全員が一つのゴールに向かって力を発揮するためのチームリーダーの役割も担っています。