透析予防に向けて 豊見城中央病院腎臓サポート外来を紹介します

突然ですが、皆さん…透析が日常生活に与える影響についてご存知ですか?
透析は、弱った腎臓に代わって血液中の老廃物や余分な水分を取り除き、血液をきれいにする治療法です。しかし、通院や治療に時間を要し、行動範囲が制限され合併症の可能性があるなど、日常生活に大きな負担がかかります。そこで豊見城中央病院では、透析導入患者数の減少を目指し、糖尿病内科と腎臓内科が連携して、当院の糖尿病内科に通院中で糖尿病性腎症を合併した患者さんを対象に、糖尿病透析予防指導を積極的に行っています。まずは、糖尿病と腎臓病の関連性について解説します。

糖尿病性腎症とは?

慢性腎臓病(CKD)のうち糖尿病が原因で起こるのが糖尿病性腎症で、2型糖尿病(※)の患者さんの3~4割が発症します。糖尿病性腎症は、日本で新規に透析(血液透析、腹膜透析) を開始する原因疾患の第1位で、特に沖縄県の人口100万人当たりの慢性透析患者数、新規透析導入患者数は全国ワーストクラスです。

(※) 2型糖尿病……糖尿病には“1型”と“2型”があり、最も多いタイプの糖尿病が2型糖尿病です。1型糖尿病は、何らかの原因で膵臓機能に障害が起こりインスリンを生成できなくなるため注射によってインスリンを補う必要があるのに対し、2型糖尿病は遺伝的な要素や、運動不足や食べ過ぎといった生活習慣が原因で起こるもので、まずは運動療法や食事療法による治療を行います。

慢性腎臓病になるとどうなる?

慢性腎臓病(CKD)は、腎臓の働きに障害が起きている状態が3カ月以上続く場合と定義されています。ほとんどが無症状で、血液検査による腎機能の異常(eGFRの低下)や尿検査による蛋白尿により診断されます。CKDでは、腎機能の低下に伴い心筋梗塞や脳卒中などの心血管病を合併する頻度が高くなります。また、進行して末期腎不全にいたると、透析療法や腎移植などの腎代替療法が必要になります。

沖縄県で透析患者数が多い理由は?

沖縄県では、肥満率が全国平均を大きく上回っています。肥満になると慢性腎臓病の原因となる糖尿病や高血圧症を合併することが多く、結果として透析患者数の増加につながります。また健診受診率が低く、糖尿病や腎臓病の早期発見および早期治療が遅れがちであることも理由の一つと考えられています。

腎臓サポート外来について

腎臓サポート外来では、透析導入の予防もしくはできる限り透析導入の時期を遅らせることができるよう、そして患者さんご自身が腎臓を守る自己管理を継続して行えるように医師、看護師、管理栄養士、薬剤師等からなるチームが力を合わせて患者さんお一人おひとりをサポートします。

私たちがサポートします!

透析センター長 幸地政子 医師(腎臓専門)

糖尿病による慢性腎臓病の治療においては、糖尿病だけなく、合併症として多く見られる高血圧や脂質異常症の治療のほか、肥満の是正、減塩中心の食事療法、適度な運動、禁煙などの生活習慣改善により、病状の進行を抑えることが大切です。これらは、糖尿病や慢性腎臓病の重大な合併症である心血管病の予防にも繋がります。当外来では、多職種が各専門的観点から患者さんに関わっています。

内科 澤紙亜希子 医師(糖尿病専門)

糖尿病治療の最大の目標は、合併症を予防、または進行させないことです。そのためには良好な血糖・血圧等の生活習慣病の管理が重要です。食事運動療法を基本としながら、合併症予防効果のある治療薬も併用し患者さんをサポートしていきます。

腎臓病療養指導士 上原多美子 看護師

患者さんの生活習慣の聞き取りを行い、検査結果の見方や正しい血圧測定方法のアドバイス(指導)など、患者さんの腎臓を守るために必要なサポートをしています。

透析室 看護師 吉門角子 師長

腎サポート外来では「見る」「聞く」「触る」などの疑似体験や透析室見学を通して、透析療法を開始する可能性のある患者さんの心の準備を支援しています。また、透析室では、透析開始前から透析導入、維持透析、患者さんのセルフケアまで一貫したサポート体制を整えてています

透析室 看護師 照屋栄子 主任

患者さんが望む生活を実現するために、ご家族も含めて一緒に考え、患者さんの価値観に基づいた『意思』を支えることを心がけています。透析導入はご家族の生活にも影響を及ぼすため、患者さんだけでなくご家族もサポートしています。

管理栄養士

主に塩分制限やカリウム除去を目的として、患者さんの検査データや生活環境の変化、嗜好の変化などの情報を他職種と共有し、患者さんお一人おひとりに合った食事療法の資料などの提供を通してサポートしていきます。

薬剤師 大城匡史 薬剤科科長代行

腎不全治療では服薬遵守が鍵を握ります。患者さんへ治療の目的や目標、服薬意義を説明し、個々に合わせた飲み方の提案や副作用の確認を行っています。他病院の処方薬や市販薬にも注意を払いながら患者さんの腎機能が適切に保てるようにサポートをしていきます。