日本で2人目!山内救急部長米国EMS専門医の資格を取得しました

米国EMS専門医資格とは

アメリカで救急専門医として認定された医師の中で、さらにEMS(EmergencyMedical Services)フェローシップ研修(救急医学の中でもさらに専門的な分野を学ぶ研修プログラム)を修了し、試験に合格した人に与えられる資格です。米国EMS専門医はプレホスピタル(病院前救護)、災害医療、医療搬送などの臨床的、実践的な側面に携わるだけでなく、病院前診療の構築、方針や手順の策定、研究など行政または学術的な側面からも救急医療を指揮・監督する専門家です。

山内先生インタビューしました

資格取得への経緯

私は、2018年にアメリカのアイオワ大学での救急レジデンシー(専門研修)修了後、救急医療の中でのさらなる専門分野として、以前から興味のあったプレホスピタルと災害医療をさらに深く学びたいと考え、ニュージャージー州の病院でのフェローシップに進みました。
2019年末にフェローシップを修了し、EMSのサブスペシャリティー専門医試験の受験資格が与えられたのですが、試験が2年に一度しかないこと、コロナ禍で渡米できなかったことなどがあり受験が延び、ようやく2023年10月の試験を受験することができました。
この資格は、アメリカの救急専門医でも持っている人は少ないですが、正直なところ、日本で救急医として働く上では全く不要な資格です。実は私も、当初はわざわざ苦労してまで受験しなくていいと考えていました。試験そのものも難関と言われていますし、日本ではこの資格の意義を発揮できないと思っていたからです。でも、その気持ちを変えてくれたのは、今一緒に働いてくれている救急科の仲間たちです。私たち救急科は、”TogethER, DoBettER, To HighER”(みんなで、より良い救急医療を、より高みを目指して)と言うスローガンを掲げ、救急外来でもプレホスピタルの現場でも日々頑張っています。私も、現状に満足するのではなく、もっと上を目指して、日々挑戦していくようにと指導しています。
彼らが頑張っている姿を見て、私も難しいことに挑戦して、部門をさらなる高みへ導きたい、そして、私が資格取得の過程で学んだことをみんなに教えることで、さらにみんなを成長させることができるのではないかと考えを改め、受験する覚悟を決めました。

資格を取得して

今回、EMSの専門性の深さを勉強することで、改めて自分の未熟さを痛感させられました。一方で、今回私が学んだことは、当院がすでに取り組んでいるドクターカーを用いたプレホスピタル医療にも役立つことですし、災害医療や医療搬送など、これから当院が取り組んでいくことにも大きなヒントをくれるものです。特に、2024年度は当科が中心となって高規格救急車の運用を始めます。これは、友愛医療センターという一つの病院を飛び越えて、周囲の病院やクリニック、消防、地域住民の皆さんも巻き込んだ、「地域の医療を守るための取り組み」の一つです。
EMS専門医としての知識やこれまでの経験を活かし、地域のみなさんが安心して過ごせるための医療体制の構築、そして私たち友愛医療センターの職員が誇りとモチベーションを持って働ける環境作りのお手伝いができればと思います。