「院内美術担当」介護士 みんなを笑顔に

豊見城中央病院に介護福祉士として勤務する樽角さんは、8年前、旧南部病院時代に友愛会に入職し、現在は7階病棟で患者さんの食事や入浴の介助などを担当している。
日々てきぱきと仕事をこなす樽角さんだが、院内ではもう一つの顔が。テレビや映画制作でいうところの「美術担当スタッフ」で、患者さんやスタッフを楽しませるイラストや行事に必要な小道具づくりは樽角さん抜きに語れない。
院内の夏祭りに活躍するお神輿、獅子舞など行事の主役を飾る大作をはじめ、月替りで掲示されるイラストまで、これまでさまざまな作品を手掛けてきた。特にイラストはファンも多く、似顔絵を描いてもらった3階病棟の金城華奈子師長は缶バッジにして愛用中だ。


制作のきっかけには、ある患者さんとの出会いがある。少し気難しい、笑顔の少ない患者さんに喜んでもらえればと、季節にちなんで紫陽花を描いて渡したところ、初めて笑顔を向けてくれたことがとても嬉しかったそうだ。それからは毎月イラストを描いては院内に掲示し、行事用の小道具作りにも取り組むように。イラストは季節感を大切にし、好きなキャラクターを組み合わせて描く。本人いわく「見た人がほっとできるような、ゆる~い感じ」が信条だ。

イマジネーションの源泉にあるのは趣味の漫画で、好きな作家は「鋼の錬金術師」で知られる荒川弘さん。息子3人の影響で少年漫画を読み始めたところ見事にハマり、発売日の早朝に近所のコンビニに買いに行くのが日課になったという。好きなものがあってこそ、仕事にも一層張り合いが出る。最近では、漫画を舞台化した「2.5次元舞台」に夢中だそうだ。

「手に職を」と一念発起し、介護福祉士となって11年目。患者さんと交わす他愛ない会話やふれあいが一番のやりがいだと語る。中には制作作業のお手伝いをしてくれる患者さんもいて、一緒に作って完成させた作品は喜びもひとしおだ。入院中の患者さんが日々少しでも笑顔になれる時間を作りたいー。そんな思いを胸に、今日も仕事と制作活動に向き合っている。

夏祭りの時に病棟内を練り歩いたお神輿
お神輿は現在病棟で「友愛神社」として祀られている
イラストは患者さんやスタッフにプレゼントしているそう